コーヒー豆は古くなると酸っぱい味がしますよね。コーヒー豆をなんとか救済できないか、化学的な視点を交えて検証していきたいと思います。今回はコーヒー豆を加熱する方法を試しますが、ただ加熱するわけではなく、コーヒー豆にあるひと工夫を施した上で加熱する方法を検証していきたいと思います。(結論言うとこの方法はおすすめです。)この方法により「なぜ豆が復活するの?」という所については以下の記事で説明していますので確認してみてくださいね。
実験方法
実験は以下の手順で行いました。
- 豆20gをザルの上で量り取る
- ウィスキー200gにレモン汁3gを混ぜた液を作る
- 豆を2の液へと浸し、軽く混ぜる(30秒程度で十分)
- 3の豆入りの液をザルに開けて豆だけ取り出す
- 加熱したフライパンに4を入れ、アルコールを一気に飛ばして乾くまで加熱する(1分程度)
- コーヒー豆を中挽きで挽き、ドリッパーへセット
- 下記の条件でコーヒーを入れる
※ドリップ条件はハリオV60(02)ドリッパー、豆20g、湯温86度、蒸らし30秒、湯量200cc - pH、TDS、味を確認してコーヒーを評価する。
※pH(ペーハー)は水素イオン指数で酸の強さを表す指標です。
※TDS(総溶解固形物)は抽出液の濃度を表す指標です。
今回も豆は料理用のクッキングスケールで量り取りました。
※ちなみにコーヒースケールといえばAcaiaですが、これについて気になる方は下記からご覧ください。
ウィスキーの種類は焦がした樽で熟成して作るバーボンを選択。バーボンの香ばしい香りとコーヒーの香ばしさを掛け合わせるのが狙い。
さらにバーボンはワイルドターキーの101を選択。ブランドはどこでも良かったのですが、バーボンの中では比較的アルコール度数の高い101(50.5度)を選択しました。(フィッシャーのエステル化を少しでも促進するのが狙いです。)

豆とウィスキーとレモン汁を混ぜた写真が下記になります。
(もっときれいな容器にすればよかった。笑)

これをザルにあけた後にフライパンで一気に加熱・乾燥します。
また、今回はウィスキーやレモン汁の効果もわかりやすくする為に、「加熱だけしたもの」、「レモン汁を加えずにウィスキーだけに浸して加熱したもの」の2つも条件として追加しました。
あとはドリップした後にpH、TDSを測定し、味を確認して完了です。
実験結果
下記に検証データ(pH、TDS)をグラフ化したものを添付します。
今回は下記のグラフの中の「Normal」と「Roast」、「RW」、「RWL」を見ていきましょう。
Normalが通常の何もせずに入れたコーヒー、Roastがコーヒー豆を加熱だけしたもの。RWがウィスキーに浸した豆を加熱したもの。RWLがウィスキーにレモン汁を加えた液に豆を浸してから加熱したものです。

pHの値を見るとRW、RWLではpHがNormalと同程度。一方でRoastはNormalに比べ、やや高い値を示しました。
また、TDSを見るとNormalはバラツキは大きいものの、Roast、RW、RWLのそれぞれでNormalよりも高い値を示しているように見えます。
それぞれで味を比べると、Normalは古い豆特有のえぐ味を伴うような酸味を感じました。
Roastは豆をやや深煎にしたような苦味中心の味で、酸味の印象が弱まっていました。
RWはウィスキーの風味や甘みが加わりましたが、酸味がたりず、物足りない印象でした。
RWLはウィスキーの風味・甘みにレモンの新鮮な酸味が加わり、美味しく仕上がりました。(正直これはおすすめできます。)
考察
コーヒー豆だけを加熱するとpHが高くなったのに対し、ウィスキーを添加するとpHは高くなりませんでした。
コーヒー豆だけを加熱したものは、加熱により酸が分解した為にpHがやや高くなったと考えられます。
ウィスキーに浸して加熱するとウィスキーが蒸発している間は水の沸点100度以上には温度が上がらない為に酸の分解が進まず、結果としてpHはNormalと同程度の値となったと考えられます。
さて、レモン汁を加えたものが今回の本命です。
もともとレモン汁を加える狙いは酸触媒として機能させ、古いコーヒーに含まれる低級脂肪酸をエステル化して除去する事が狙いです。
もし、なんの反応も起きない場合、レモン汁の酸が加わる為にpHは下がるはずです。(レモン汁のpHは2.5程程度でした。)
しかし、実際にはpHはほとんど変化していませんので、レモンの酸が加わったものの、一方で狙い通り脂肪酸はエステル化され、コーヒー全体としてのpHはNormalと同程度になったのかもしれません。
TDSの値を見てみると、加熱したものはRoast、RW、RWLともにTDSがやや高い値を示しています。
RWとRWLはウィスキーやレモン汁を添加していますので、その成分が追加されたのかもしれません。
Roastについては、豆への火の通りが良くなり豆の細胞壁がより破壊された事により、豆の成分がより多く抽出されるようになったのでは?と推測しております。
毎回おなじみのセリフですが、専門機器で分析したわけではないので推測の域は出ておりません。
お宅実験ですのでご容赦いただきたく。
ウィスキーとレモン汁を添加して加熱する方法による豆の復活は実用的か?
結論は「実用的である」です。
検証3回めにしてようやくですが、この方法は実用的であると私は言えます。
なぜ実用的かというと「美味い」からです。
いろいろ化学的なウンチクを語ってきましたが、やっぱり最後は味ですね。
シンプルに美味しいのが一番。この方法であれば、香り、酸味ともに豆を回復させられます。
正直この方法に名前を付けたいくらいです。(とりあえずRWL法とでも読んでおきましょうか。)
皆さんも古い豆の処理に困ったら是非この方法を試してみてください。
さて、全部で4回にわたりコーヒー豆を復活する為の方法について、仮説・検証してまいりました。
お宅実験でも意外といろいろできるものですね。
コーヒー豆の鮮度は非常に短いため、万が一古くなってしまった際には今回検証した方法を皆さんも是非試してみてはいかがでしょうか?
それではまた。
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